原口小児科クリニックのご案内

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医院名
医療法人社団
原口小児科クリニック

院長
原口 道夫
住所
〒144-0032
東京都大田区北糀谷1-11-8
アルトT 1F
診療科目
小児科・アレルギー科
電話番号
03-3742-1517
その他
匿名加工情報の作成と提供に関する公表

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎 Q&A

アトピー性皮膚炎は決して一生治らない難病などではありません。自然軽快傾向も強く、適切な治療とスキンケアーによって治っていく病気なのです。さらにアトピー性皮膚炎が完全に治って年月が経った人の皮膚を調べると完全に正常な状態になっていることが示されています。
(参考文献:Matsumoto M:Skin barrier function in patients with completely healed atopic dermatitis.J.Dermatol.Sci.23.178-182.2000)

【Q&A一覧】

Q1.アトピー性皮膚炎というのはどんな病気ですか?

 A  アトピー性皮膚炎というと大変にショックを受けて、一生治らない病気のように考えてしまう方が多いようですが、じつは乳幼児の10~20%ぐらいは経験するごくありふれた病気なのです。アトピー性皮膚炎とは何かときかれると、沢山の項目が並べられた定義、診断基準がいくつもあって、一言で答えるのはなかなか難しいのですが、きわめて大胆に言うと、カユイ、カサカサ、クリカエスという特徴を持った湿疹といえるでしょう。慢性の経過をとる特徴的な湿疹ということですが、慢性とは乳児期では2ヶ月以上、それ以降では6ヶ月以上ということです。検査でアレルギー反応が陽性となることは診断の条件ではありません。

アトピー性皮膚炎の皮膚の特徴はカサカサしていることです。正常の皮膚では、表面を薄いラップを何枚も積み重ねたような角質層が覆っており、体内から水分が失われたり、外からいろいろな刺激物質やアレルゲンなどが進入してくるのを防いでいます。角質層はちょうど建物をつくるときのレンガのブロックのような平たい角質細胞が積み重なって、そのすきまをモルタルセメントのようにセラミドやコレステロールなどの脂肪がぎっしりと埋めて出来ています。ところがセラミドなどの油が少なくなると、角質層は細胞の間に隙間がみられるようになり、水分が失われるようになって、カサカサしてきます。さらに水分が失われると皮膚の細胞のあいだは隙間だらけになり、簡単にいろいろな刺激やアレルゲンが入ってくるようになります。この状態を、皮膚のバリアー機能が低下しているといいますが、要するに屋根に例えると「雨漏り」をしているようなものです。

バリアー機能が低下し、いろいろな刺激物質が表皮を通して入ってくると、表皮の下まで来ている神経を刺激して、かゆくなります。カサカサして、かゆい皮膚はバリアー機能が落ちているのです。かゆくて掻くと角質層は破壊され、さらにバリアー機能は低下します。

バリアー機能の落ちた皮膚からは、簡単にダニの排泄物や花粉や食物などのアレルゲンが入ってきてアレルギー性炎症を起こすようになります。炎症がおこると、新陳代謝がはやまって、ゆっくりセラミドなどを作ったり、角質細胞もじっくり角質化したりする暇もなくなり、ますます、バリアー機能は低下していきます。炎症は火事のようなものですから、アトピー性皮膚炎は、雨漏りと火事をくりかえしている病気と考えられます。

中川秀巳:アトピー性皮膚炎のスキンケアー。1997

中川秀巳:アトピー性皮膚炎のスキンケアー。1997

Q2.アトピー性皮膚炎とアレルギーの関係はどうなのですか。

 A  アトピー性皮膚炎は皮膚のバリアー機能の低下のように非アレルギー的側面が大きいので本当にアレルギー疾患といってよいのかという議論もあるくらいですが、アレルギー疾患です。

消化管は、食物を消化をして、アレルギーを起こす力を弱くしたり、アレルギーを抑えるブレーキをかける免疫の仕組みがだんだんと発達して、やたらとアレルギーを起こして、必要な食物を拒絶しないような仕組みが発達してきます。赤ちゃんのときに卵を食べられないことは非常に多いのですが、消化管の発達とともに、消化機能も発達してきて、さらにアレルギーを抑える免疫も発達してくるので、食べられるようになることが多いのです。

一方、バリアー機能の落ちた皮膚から、吸収されてきたダニや食物抗原は非常にアレルギーを起こしやすい状態におかれるのです。

アトピー性皮膚炎の人の皮膚のようにバリアー機能がおちて、さかんに抗原が進入してくるような皮膚では免疫細胞がアレルギーを起こす方向に強く働きかける物質(TSLP)が沢山存在することが確認されています。

皮膚や粘膜を通して進入してきた異物を食べて消化し、異物の情報を免疫系に伝える樹状細胞はもともと、いわば中立の立場にいるのですが、周りの環境、とくにTSLPのようにアレルギーを起こす方向に働きかけるものがいると、アレルギーを起こすように免疫系に情報を伝え、アレルギー反応が進行し、アレルギー性炎症が強くなります。アレルギー性炎症が強くなるとまたバリアー機能も低下し、さらにTSLPなども大量に作られ、さらにアレルギーを起こしやすくなります。

同じユダヤ系の人でも、イスラエルの住んでいるユダヤ人はピーナッツをよく食べるのにピーナッツアレルギーは少なく、英国に住んでいるユダヤ人はピーナッツを食べないのにピーナッツアレルギーが多いということです。英国では、伝統的にピーナッツオイルでスキンケアーをする習慣があり、同じ人種でも皮膚から吸収される食物抗原のほうがアレルギーを起こしやすい例として、最近よく引用されます。

アトピー性皮膚炎はいろいろなアレルギーの病気の入り口になります。

Q3.アトピー性皮膚炎の治療はどうすればよいのですか。

 A  まず、標準的なステロイド軟膏によって、炎症(火事)を抑えることが大切です。皮膚のバリアー機能が低下していること(雨漏り)が重要な原因なのですが、見たところ、炎症が軽いと思われるような場所にも炎症は存在することが多いのです。バリアー機能の低下により、炎症もアレルギーも起こるのですが、炎症があるとバリアー機能を著しく落とすのです。まず火事をしっかり消すことが大切です。

最も効果的で安全に炎症が抑えられるのは、ステロイド軟膏です。免疫抑制剤のタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)も炎症を抑えるのにとてもよいお薬ですが、これはまたあとでお話します。

Q3.アトピー性皮膚炎の治療はどうすればよいのですか。

まず、相手がどこであれ、ダルビッシュやマー君のようなエースが先発です。
アトピー性皮膚炎の治療のエースはなんといってもステロイド軟膏です。

ところで、炎症は火事ですから,ボヤのうちに消したいですよね。
タバコの火がこげたぐらいならコップの水ですみますが、カーテンにも火が燃え移るとバケツの水でも危ないですね。火事はできるだけボヤのうちに消したいですよね。小児科で使う薬はだいたいコップの水程度のものが多いのですが、必要に応じてバケツの水も使います。

しっかり使うと大体三日目ぐらいから目にみえて効果があらわれて、一週間もするとかなり皮膚の状態は良くなっているはずです。しっかりと皮膚の炎症がとれているかを触ってみて確認することが大切です。

ゴアゴアした硬い状態では、赤みが取れても慢性の炎症は続いているのです。炎症が治まった皮膚を実際に触ってみるとスベスベ、シットリして、つまんでみるとやわらかくなっているのがわかります。炎症がとれたら,だんだんとステロイド軟膏を塗る回数をへらしていき、保湿剤に置き換えていきます。

ステロイド軟膏は塗る量と塗り方が大切です。
塗る量は人差し指の一関節分に出した軟膏が手のひら2枚分の面積の皮膚に塗るのに適量とされています。
※フィンガーチップユニット(FTU)

塗り方は塗ろうとする病変部の周囲数箇所に少量ずつ軟膏をのせます。ちょうど表面が少し光る程度に広くのばしてください。このとき擦り込む必要はありません。

中川秀巳:アトピー性皮膚炎のスキンケアー。1997

古江増隆 ステロイド外用剤の使い方 アレルギー 2009年(5)

軟膏の正しい塗り方

軟膏の正しい塗り方

ステロイド外用薬の塗り方
(1)チューブの先から軟膏を2~3mm指先に押し出す

軟膏の正しい塗り方

(2)病変部の周囲数ヵ所少量ずつ軟膏をのせる。必ず病変部側に軟膏をのせるのがポイント。

軟膏の正しい塗り方

(3)全体に薄く伸ばして、ちょうど表面が少し光る程度にまで広く伸ばすようにする。擦り込む必要はない。

Q4.ステロイド軟膏は使い始めると止められなくなる怖い薬だと聞いたのですが。

 A  ステロイド軟膏についての誤解がアトピー性皮膚炎を治りにくくしている最も大きな原因ではないかと考えられます。ステロイドホルモンはもともと毒などではなく、常にからだの中の副腎(腎臓の上にある小さな三角形の器官です)から、必要に応じて絶えず作り続けられており、人間が生きていくためには一時も欠かすことが出来ない重要なホルモンのひとつです。

ステロイドを薬として使用した場合に一番困るのは体の中の副腎がステロイドホルモンをつくるのをサボってしまうようになってしまうことです。軟膏として外用する場合にはこのような心配はないのですが、他の病気でステロイド薬を長期に飲み薬として使用した場合には副腎の働きが悪くなって、いざというときに大切なステロイドホルモンを作れなくなってしまうと本当に困る場合があるのです。軟膏ではこのような副腎抑制は起こりません。また、内服などの全身投与でおこる成長を抑制したり、骨が弱くなったり、白内障になったり、胃潰瘍が出来やすくなったりなどなど、全身性の副作用はステロイド軟膏をきちんと使っている場合にはおこりません。

また、よく心配されるのはステロイド軟膏は使っているうちに効きが悪くなってきて、だんだん強い薬が必要となり、止められなくなってしまうという不安を訴える方も少なくありません。表皮細胞は約30日で入れかわってしまい、薬が効かなくなる耐性が生じることはありません。また、体の中で常に作られて重要な働きを続けているホルモンですから、ある細胞がホルモンの作用に慣れてしまって効果がなくなってくるようなことが本当におこるとしたら私たちは生きていけないはずです。また、炎症が治まれば止めることができますし、きちんと使用していれば、使用するステロイド軟膏の量はだんだんと減ってきます。

あと不思議なことは、ステロイドの毒が体の中に蓄積すると言う「脱ステロイド療法」を主張する人たちやアトピービジネスの人たちがよく言うようことですが、ステロイドは毒ではなく、人間の身体にとって重要なホルモンなのです。体の中に蓄積なんかしません。ステロイド軟膏を止めると悪化するというのは体の中に蓄積していない何よりの証拠であると考えられます。「あなたが塗り続けてきたステロイドがこの子を苦しめているのです」などと、母親の罪悪感をあおったり、脅かしたりするのには有効かもしれませんが、科学的とはいえません。もちろん、人間としてやってはならないことです。

実際におこりうるステロイド軟膏の重要な副作用は次の2つです。

1】皮膚の萎縮、血管拡張
特に問題になるのは顔面の酒さ様皮膚炎です。強いステロイド剤を顔面に長期に使用した場合に顔が真っ赤になってしまうことがあります。顔面に使うステロイドは皮膚萎縮をおこしやすいのでランクを落とすなど注意が必要です。現在ではプロトピック軟膏をうまく使うことで完全に回避できます。

皮膚が厚くなってゴアゴアした状態をステロイドの副作用と誤解されることがあります。
ステロイド剤は皮膚が薄くなることはあっても厚くなることはありません。もちろん慢性に炎症が続いているからゴアゴアしてくるのです。炎症のあとは色素を持った細胞が集まってきて、色素沈着がみられることがよくありますが、これもよくステロイドの副作用と誤解されます。

2】皮膚の感染の誘発
にきびや毛嚢炎などの皮膚の感染症がおきやすくなることはあります。水いぼなども出来やすくなるといわれますが、カサカサした皮膚はウイルスや細菌に対する抵抗力も落ちるので、必ずしもステロイドのせいとは言えないと思われます。実際、ステロイドを使用していない乾燥肌の子が水いぼを繰り返すのはよく経験します。皮膚のヘルペスウイルスの感染がひどくなることがあり、これは注意する必要があります。

Q5.ステロイド軟膏を使うとよくなるのですが、止めるとすぐに悪くなってしまいます。

Q5.ステロイド軟膏を使うとよくなるのですが、止めるとすぐに悪くなってしまいます。

 A  これは本当によく言われることですが、炎症が治まっていない段階で早くステロイドを止めすぎるからです。触ってみることが大切です。炎症が治まると触ってみると皮膚はスベスベ、シットリとなり、つまんでみるとやわらかくなってきます。赤みが取れただけでは炎症は治まっていないのです。一見正常に見える部分にも炎症が残っていることが多いのです。繰り返す場所は塗る回数を徐々に減らしていく必要があります。保湿剤だけでアトピー性皮膚炎は治療することは出来ませんが、保湿剤に徐々に置き換えていくのも大切です。早く止めすぎることを繰り返して、だんだん悪化してステロイド軟膏が効かなくなってきたといっている人はとても多いです。

Q6.プロトピック軟膏を塗るとピリピリしてつらいです。大丈夫なのですか。

 A  薬の特徴をよく知って使うことが大切です。プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)は筑波山の土壌から見つかった放線菌の代謝産物の中から免疫抑制作用の強い物質を軟膏として使えるように作られたものです。ステロイドとはまったく違うものですが、ストロングクラスのステロイドと同程度の抗炎症作用があります。さらに、ステロイド剤にはないかゆみを抑える作用も期待されます。さらにステロイド外用剤を顔面などに長期に連用した場合に見られる皮膚萎縮などの副作用もみられないので、顔面や頚部の頑固な湿疹に特に有効です。

個人差はありますが、特に使いはじめに強いかゆみが出たり、ヒリヒリしたりする刺激感が見られることが多いのです。じつはこれがこの薬の特徴でもあり、良さでもあるのです。

健康な皮膚は分子量が500以上のものはまったく通さないのです。プロトピック軟膏は分子量が800と大きく、健康な皮膚にプロトピック軟膏を塗ってもまったく吸収されません。しかし、アトピー性皮膚炎のようなバリアー機能の低下した皮膚では大きな図体で無理やり通り抜けるので刺激感を感じるのです。炎症が治まりバリアー機能が回復してくると皮膚をほとんど通過することがなくなり、刺激感もなくなってきます。

江藤隆文;アトピー性皮膚炎とFK506 小児科臨床 2009年 7号

江藤隆文 アトピー性皮膚炎とFK506 小児科臨床 2009年 7号

プロトピック軟膏の性質を考えると、強い炎症にいきなり用いるのは得策ではないと考えられます。表4はプロトピック軟膏の開発から知見にもかかわった東京逓信病院皮膚科の江藤隆文先生のものですが、まずしっかりと十分なステロイド軟膏(FTU)を使用して、炎症を沈静化してから、ステロイド剤の回数やランクを下げ、保湿剤を併用したりして、ステロイド剤を止めたくなったときにプロトピック軟膏を導入するのがこの薬の性質を最も生かす作戦ではないかと考えられます。プロトピック軟膏を上手に使うとアトピー性皮膚炎の治療に大きな力を発揮することになります。

炎症を抑えるエースはステロイド剤ですが、プロトピック軟膏はむしろ中継ぎないし押さえピッチャーとして、活躍するのに向いているのではないかと思います。

江藤隆文 アトピー性皮膚炎とFK506 小児科臨床 2009年7号

江藤隆文 アトピー性皮膚炎とFK506 小児科臨床 2009年7号

Q7.石鹸やシャンプーはどんなものを使えばよいのでしょうか。

Q7.石鹸やシャンプーはどんなものを使えばよいのでしょうか。

 A  石鹸やシャンプーは特別な香料などの入っていないごく普通のものを使ってください。
高い石鹸を買う必要はありません。石鹸やシャンプーでアトピー性皮膚炎が治るわけではないのです。低刺激性の石鹸は洗う力が弱く、基本的にはあまりおすすめではありません。
石鹸の泡の中に長くつからない日本のような入浴の習慣では石鹸で皮膚炎が悪化することは少ないのです。どうしても石鹸で悪化してしまう場合には低刺激性の石鹸をためしてみるのもよいでしょう。

毎日入浴して、皮膚の汚れや汗を落とすことは大切です。風邪などでしばらく入浴しないと皮膚炎が悪化してしまうのはよく経験することです。自分の垢で皮膚テスト(パッチテスト)をすると、アトピー性皮膚炎の人は高確率で陽性になるという皮膚科の先生のデータもあります。

ところで洗いかたですが、汚れや汗を落とすのが大切だといっても、硬いナイロンタオルなどでゴシゴシとこすってはいませんか?脂が少なくバリアー機能の低下している皮膚をこするとますますバリアー機能が低下し,皮膚の雨漏り状態がひどくなってしまいます。あらかじめ石鹸を泡立てておいて、手のひらでマッサージをするように丁寧に洗います。
赤ちゃんの顔を石鹸で洗わないかたもかなりおられますが、赤ちゃんの皮膚は食べ物かすやよだれなどで、汚れが残りやすく、石鹸を使ってきれいにしてあげる必要があります。

洗ったあとはよくすすいで、石鹸やシャンプーが皮膚に残らないようにします。洗う順番ですが、頭を先にシャンプーで洗ってから、顔や身体を洗うようにすると皮膚にシャンプーが残りにくいです。

Q8.スキンケアーについて教えてください。

 A  スキンケアーは大切ですが、スキンケアーだけでアトピー性皮膚炎を治すことはできません。まず、ステロイド軟膏をきちんと使用して、(フィンガーチップユニットです。少し光って軟膏が皮膚についているのがわかる程度でしたね)炎症をしっかり抑えてから、バリアー機能の低下した皮膚から水分が失われてカサカサにならないように、シットリ、スベスベな状態を保つように保湿剤を中心にスキンケアーをします。カサカサしたときだけでなく、カサカサしないように保湿剤を使うのが大切です。お母さんもお肌の手入れはお肌があれたときだけしませんよね。お肌が荒れないようにするのと同じです。

お肌をスベスベ、シットリとさせるのは、皮膚のバリアー機能の低下を抑えるのに大切ですが、湿疹を悪化させ、バリアー機能を低下させる要因を取り除くこともきわめて重要です。

寝ている間に汗をかくような季節は朝シャワーをして汗を流すことがおすすめです。一日汗や布団のダニ抗原を皮膚につけたままでは治療の効果も上がりません。汗を拭いただけでは汗の成分は残ってしまい、湿疹は悪化してしまいます。お子さんが汗びっしょりになって汚れて帰ってきたら、できるだけすぐにシャワーをしてあげましょう。

アトピー性皮膚炎の小学生に治療はそのまま変えずに、学校の昼休みに数分のシャワーを続けてもらったところ、症状が大幅に改善したという厚生労働省の研究班の調査結果も参考になると思います。

最も皮膚のバリアー機能を悪化させるのは、掻くことです。かゆいから、掻く、掻くと悪化する、悪化するとますますかゆくなるときりがない悪循環に陥ってしまいます。せめて掻くのは爪なので爪はきれいに切ってあげましょう。

Q9.食事制限は必要なのでしょうか。

 A  基本的に明らかにその食べ物で症状が悪くなる場合は仕方がないので、しばらくの間、その食物を避けるということはあっても、アレルギーをよくするために積極的に、厳しい食事制限をすることは意味がありません。アナフィラキシーのような強い反応が見られる場合には危険を回避するために、除去食をしなければなりませんが、食物除去でアレルギーがよくなるわけではありません。除去食だけでアトピー性皮膚炎を治療することは出来ません。

卵のアレルギーのある赤ちゃんは沢山いますが、ずっと食べられないことは少なく、だんだんと消化能力が高くなってきて、過剰なアレルギーを抑える免疫も発達してきて、徐々に食べられるようになってくることが多いのです。消化管は沢山の食物と頻回に接触し続けるのですが、過剰にいろいろな食物を拒絶しないように、アレルギーにブレーキをかけるような免疫が発達してきます。

食物の種類によっても、個人によっても、また年齢によっても異なるのですが、卵やミルクや小麦は成長とともに食べられるようになるということが多いのですが、そばやピーナッツは耐性を獲得して食べられるようになることはなかなか難しいのです。年長児になるとエビやカニなどのアレルギーが多くなってきています。

卵アレルギーは一時的なもので成長とともに食べられるようになることが多いのですが、出来るだけアレルギーを起こしにくいように少量ずつはじめていきます。卵黄のほうが卵白よりもアレルギーは起こしにくいですし、しっかり加熱した卵黄を少量ずつ上げていくのが一般的にはよいだろうと思います。ひとりひとり違いますので、心配な場合は必ず相談してください。

まだまだ議論もあり、解決しなければならないことは沢山あるのですが、一時の厳格な食事制限は見直され、食事制限を出来るだけ緩和しようとする方向にむいてきています。さらに、もっと積極的に「食べて、なおす」という経口免疫寛容誘導法も世界中で試みられています。安全性の問題もありますが、効果をあげている例もかなりあるようで、希望の持てるアプローチだと思います。より、安全で有効な方法が確立されることが期待されます。

さらに最近注目されているのは、皮膚を通してアレルギーが成立していく経皮感作という経路です。アトピー性皮膚炎のバリアー機能の低下した皮膚からは容易に食物などのアレルゲンが進入し、アレルギーが成立します。アトピー性皮膚炎はいろいろな疾患の入り口なのです。バリアー機能の低下したアトピー性皮膚炎の皮膚はそのままにしておいてはいけないのです。

Q10.アトピー性皮膚炎では白内障を合併することが多いそうですが、ステロイド軟膏の副作用ではないのですか。

 A  アトピー性皮膚炎の治療にステロイド剤が使用されるようになる前の時代から、アトピー性皮膚炎の診断基準に加えられるほど、アトピー性皮膚炎に白内障が合併することはよく知られていました。

外傷性の白内障と非常によく似た症状で、ステロイド軟膏による副作用ではなく、頻繁に眼を掻いたり、たたいたりするために起こると考えられています。アトピー性皮膚炎の治療が不十分なためにおこります。他に網膜はく離など深刻な合併症や円錐角膜、アトピー性虹彩炎、アレルギー性角結膜炎などの合併症を起こすことがあります。

Q10.アトピー性皮膚炎では白内障を合併することが多いそうですが、ステロイド軟膏の副作用ではないのですか。

ステロイド忌避や不適切治療によって顔面の皮疹が重症化した人にも網膜はく離で眼科を受診する人も増えてきているということです。

アトピー性皮膚炎の治療が不十分である場合や目の周りの湿疹を繰り返している人は時々眼科で診察をしてもらうことも大切です。

Q11.アトピー性皮膚炎は治らないのですか。

 A  患者さんや親御さんだけでなく、医師でも考え違いをしている人も少なくありません。体質なんだから、上手に付き合っていきましょうみたいなことを言われることもよくあるようです。乳幼児のアトピー性皮膚炎はもちろん治りやすいのですが、成人の治りにくいアトピー性皮膚炎でも自然治癒傾向があり、必ず治っていきます。それも特殊な方法や治療法はいっさい必要なく、確立された標準的な治療法で、確実に治っていくのです。少なくとも薬をつけるときと病院に行くとき以外はアトピー性皮膚炎のことを忘れて生活できるようになるまで、そんなに時間はかかりません。しかし、“3ヶ月でアトピー性皮膚炎が完治する”などという驚異の方法などはありません。治ったも同然という状態が続き、気がついたら薬も使わなくなっていたという治り方をするものです。しかも、完全に治って時間が経った人の皮膚は完全に正常であることが確認されています。

これはダメ!!~アトピー性皮膚炎NG集 

1.たっぷりワセリンで保湿をしてから、上から赤いところだけステロイド軟膏をつけている。
2. アトピー性皮膚炎は乾燥がよくないので皮膚の脂分を落とさないように石鹸は使わないようにしている。
3. 皮膚の脂分を落とさないように入浴は2日に1回くらいにしている。
4.子供の皮膚に固形せっけんを直接塗りつけている。
5. 皮膚の汚れがよくないので、石鹸をたっぷりつけたナイロンタオルでしっかりこすっている。
6. ステロイド軟膏が心配なのでステロイドの入ってない軟膏を処方してもらっている。
7.ステロイド軟膏は副作用が怖いので出来るだけ薄く塗っている。
8.ステロイド軟膏を使わずに治療したいので徹底した除去食療法を行っている。