原口小児科クリニックのご案内

原口小児科クリニックのご案内

・JR大森駅より
森ヶ崎行きバス(約10分)
北糀谷バス停下車(徒歩2分)

・JR蒲田駅東口より
森ヶ崎行きバス(約20分)
北糀谷バス停下車(徒歩2分)

医院名
医療法人社団
原口小児科クリニック

院長
原口 道夫
住所
〒144-0032
東京都大田区北糀谷1-11-8
アルトT 1F
診療科目
小児科・アレルギー科
電話番号
03-3742-1517
その他
匿名加工情報の作成と提供に関する公表

アレルギー最新情報

 外来診療では出来るだけ必要な情報を詳しくお伝えしようと努力しているのですが、限られた時間の中ではどうしても限界があります。アレルギー疾患の治療には病気と治療の理解が重要です。

 しかし、アレルギー疾患の研究の進歩は目覚ましく、アレルギー疾患の常識は大きく変わり続けています。アレルギー専門医の間でも微妙に考え方に差があったり、受診する医療機関によっては全く違うことを言われることもあり、混乱されることも少なくないと思います。

 情報があふれる中で出来るだけわかりやすい形で役に立つTOPICSをお届けしたいと考えております。


最新TOPICS】

第6回ダニ舌下免疫療法をみなおす

すでに多くの方がスギの舌下免疫療法であるシダキュアの治療を受けておられます。効果を実感されている方も多いと思います。今回はダニの舌下免疫療法であるミティキュアについて考えてみたいと思います。

多くのアレルギーの治療薬や吸入薬は有効であっても対症療法の域を出ません。

免疫療法は疾患そのものを治していく唯一の根本治療です。日本では現在、スギとダニに対する舌下免疫療法が可能ですが

1)疾患の症状を軽くし、寛かい率を高める

2)くすりの減量が可能となる

3)新規の別の抗原の感作を予防する。

4)他のアレルギー疾患を予防する。

など多くのメリットがあります。

ダニの舌下免疫療法は日本では保険適応がアレルギー性鼻炎になっていますが、アレルギー性鼻炎の症状のみならず、気管支喘息に対する有効性についても国内外から報告が集まってきています。

ダニの舌下免疫療法は気道上皮の状態を改善し、気道のバリアー機能を改善することによってウイルスの侵入を減らし、抗原の侵入が少なくなることが期待されます。喘息の本質的な病態である気道の過敏性の改善も期待されます。

実際に長期にダニの舌下免疫療法をやっていると風邪をひく回数も減り、成人の喘息患者では肺炎の罹患も免疫療法により減少することが報告されています。

アレルギー性鼻炎の状態を改善することは日常生活の質を高めるばかりでなく、気道の状態の改善にもつながります。喘息の治療においてアレルギー性鼻炎の状態を改善することは非常に重要な意味を持っています。

アレルギー性鼻炎の治療のみでなく喘息の根本治療として強くお勧めしたいと考えております。

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第5回ホー吸入

吸入薬は気管支喘息の治療の中心的な薬剤ですが、飲み薬と違って、正しく気管支までお薬が到達しなければ効果が期待できません。飲み薬は飲み込みさえすれば基本的に効果はありますが、吸入薬では吸入の仕方で治療効果は大きく変わってきます。

正しい姿勢で胸を張って、吸入器のおしりも上げて、胸の奥までしっかり吸い込んで、そしてできれば5秒間息を止める。というようなことは多くの方が気を付けて入ると思いますが舌の位置や口の中の形までは考えませんよね。

強く吸い込もうとすると口の中を狭くして、圧をあげるようにスーと吸おうとすると思います。添付文書の説明図にもスーと書いてあります。

名古屋の藤田医科大学の呼吸器の先生方が見えない口腔内の様子も内視鏡で調べて、舌を下げ、ホーというつもりで深く吸うと、効率が上がることを提唱されています。ちょっと練習しないと難しいかもしれませんが、実際にやってみると胸の奥まで深く入っていくのが実感されます。YouTubeに公開されていますので是非ご覧ください。

第4回子どもの抗ヒスタミン薬の使用について考える

抗ヒスタミン薬は花粉症などのアレルギー疾患の諸症状の改善や、風邪のくしゃみ、鼻水などの症状の緩和などに幅広く使用されています。小児科でも最も多く使われている薬のひとつです。しかし、注意しなければならない点もあります。抗ヒスタミン薬は全世代で幅広く使用される薬剤ですが今回は特に子供に焦点を当てて考えてみたいと思います。


ヒスタミンはくしゃみ、発赤、かゆみなどの症状をおこし、アレルギー疾患の症状を引き起こす物質で以前は「悪玉」と考えられてきましたがその後の研究によりいろいろと重要な働きがあることが分かってきました。

ヒスタミンは皮膚や鼻や目で「かゆみ」や「くしゃみ」などの症状をひきおこします。一方、脳などの中枢神経系ではヒスタミンは脳の働きを活発にし、認知機能を高め、覚醒状態を維持します。ヒスタミンがしっかり働いてくれないと、眠くなってしまったり、集中力がなくなったり、作業能率が落ちたりします。

抗ヒスタミン薬が脳内に入っていくと脳内でのヒスタミンの働きが抑えられ、眠くなってしまったり、作業効率が落ちたりという副作用が出てしまいます。

そこで脳内に簡単には入っていかない抗アレルギー薬が次々と開発されてきました。眠くならない抗ヒスタミン薬(非鎮静性抗ヒスタミン薬)がだんだんと主流になってきています。

しかし、日本ではまだまだ認識が不十分で鎮静性の抗ヒスタミン薬が小児に処方される割合が高いことが問題だと思います。

かつては小児に使用できる非鎮静性の抗ヒスタミン薬が少なかったのも事実ですが、いまだにケトティフェン、ペリアクチンなどといった鎮静性の抗ヒスタミン薬がしばしば小児に処方されているのが現状です。欧米からは日本は鎮静性抗ヒスタミン薬の天国などと言われています。


抗ヒスタミン薬の副作用は眠くなるだけでなく、その多くは自覚されないものが多いのです。自覚されない運動・認知機能の低下(インペアードパフォーマンス)は実際に自動車事故にもつながることがあります。

☆鎮静性抗ヒスタミン薬一回分はウイスキーシングルで3杯分のインペアードパフォーマンスがあるといわれます。「酔ってないよ」などといっても実は酔っているのですね。

鎮静性抗ヒスタミン薬は学習能力を低下させることも実際の観察研究で指摘されています。認知機能の発達段階にある小児には非鎮静性の抗ヒスタミン薬を選択することが重要ですが、市販のカゼ薬の中には鎮静性の抗ヒスタミン薬が使われていることが多いため注意が必要です

小児、特に2歳以下の市販のカゼ薬の使用は避けた方が賢明です。

痙攣の既往のある小児では鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は注意が必要で、<けいれんが起こりやすくなる>と考えられています。

抗ヒスタミン薬は小児のアレルギー疾患の治療に欠かせない重要な薬ですが、できる限り中枢神経系への移行が少ない非鎮静性の抗ヒスタミン薬を使用することが重要です。

第3回朝シャワーのすすめ 汗の功罪

汗には大変重要な働きがあります。皮膚の表面において体温調節、生体防御、そして保湿など皮膚を良い状態に保つために重要な役割を果たしています

 

体重70㎏の人が体温を1℃下げるためには、100㏄の汗をかき、そのすべてが皮膚から蒸発する必要があります。体温調節には皮膚表面から汗が蒸発する際に発生する気化熱が重要なのです。(ちなみに犬は全身に汗をかくことができないので走った後、舌を出してハアハアして体温を下げようとしています。)

意外に汗をかける動物は少ないのです。

 

また汗それ自身が水分で、汗が皮膚(角層)を加湿することで免疫システムの最前線といえる皮膚(角層)のバリアー機能の維持に貢献します。さらに汗は天然保湿因子として働く乳酸ナトリウムや尿素を多く含んであり、皮膚に潤いを与えます。

 

汗はいろいろと重要な働きがあるのですが、これはあくまでも汗が新しい時

限定なのです。余剰の汗を皮膚に長時間放置すると皮膚に悪影響を与えます

昔から畳と○○は新しいほうが良いなどと言いますが、汗も新しいほうが良いのです。

 

特に乾燥した皮膚は外からの刺激に敏感です。そのような皮膚に長時間汗を付けたままにしておくと汗疹だけでなく、かぶれを起こします。

 

アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥していることが特徴で夜中にかいた汗を1日皮膚に付けたままにしておくとアトピー性皮膚炎は悪化します

 

また小児の皮膚は皮脂の分泌量が少なく、乾燥しやすいのです。よく夏は保湿しなくてもよいと誤解されますが、小児の皮膚は乾燥しやすく夏でも保湿が必要です

 

朝シャワーをして、古い汗を落とし、必ず保湿をしておくことが大切です石鹸は夜の入浴の時だけにします。皮膚は良い状態が保たれ、アトピー性皮膚炎の状態は改善します。皮膚の状態を良くしておくことがアレルギーの予防につながります

第2回)離乳期早期の《加熱鶏卵の摂取》が卵アレルギーの発症を予防する!!

 前回は卵やピーナッツなどのたんぱく質が「炎症のある皮膚から入ってくると食物アレルギーを起こすが、経口摂取された蛋白質は食物アレルギーをおさえる方向に働く」というお話を紹介いたしました。(二重抗原暴露仮説

 今回は、実際に乳児期早期から「徹底的に皮膚の状態をよくして、早期から少量の加熱卵を与えて、卵アレルギーを予防できた」という成育医療センターの研究成果(PETIT study)をご紹介します。

 アトピー性皮膚炎の乳児(生後4か月~6か月)121人を対象として、ステロイド剤も含めて皮膚の状態を徹底的に良くしておいて、加熱卵少量を生後6か月から<与えるグループ>と<与えないグループ>に分けて、1歳の時に卵約1/2個の負荷試験を行いました。

 その結果、鶏卵アレルギーの発症リスクは卵を食べなかったグループに比べて、約1/5になりました。また、卵を早期に開始しても鶏卵アレルギーを発症してしまったグループとみると湿疹が再燃していたことがわかっています。

 つまり、湿疹のある状態で卵を食べ続けても鶏卵アレルギーは阻止できない可能性があります。この研究のポイントは徹底的な皮膚のケアと少量の加熱鶏卵を使用したことです。

 この研究では食品会社の協力で全卵の加熱卵粉末を作成し使用しています。生後6か月から9か月の間は加熱卵紛末を毎日50㎎(=卵0.2g相当)、生後9か月から12か月まで加熱卵紛末毎日250㎎(=加熱卵1.1g相当)を与え続けています。

 出来るだけ皮膚をスベスベにして、少量の加熱卵を早期から開始することの重要性はわかりますが、実際には加熱した卵の粉末なんて手に入らないですし、卵1個はだいたい50グラム前後はありますし、卵0.2グラムというのはメチャクチャ少ないですね!!このぐらいの量でも効果はあるのですね。

 実際には皮膚をできるだけスベスベにして、オマジナイ程度でよいですから固ゆで卵の黄身を早期から離乳食に混ぜるようお薦めしています。おまじない程度というのは耳かき1杯程度のイメージです)

1回)二重抗原暴露仮説   食物アレルギーの新しい考え方

 2008年、イギリスの小児科医Lack.G氏は食物アレルギーに関する新しい概念:「炎症のある皮膚から食物アレルゲンが 侵入するとアレルギーを起こすようになり、適切な量とタイミングで 経口摂取された食物は、むしろアレルギー反応をおさえる免疫寛容を誘導する」という「二重抗原曝露仮説」を提唱しました。

 

 現在では仮説なんかではなく、食物アレルギーの基本的な考え方の基礎になっています。外来でも何回もこの図の説明をしていますのでまたかと思われる方も多いかもしれませんが、やはりこのコーナーの第一回目を飾るにふさわしい素晴らしい図です。

 

 炎症のある皮膚から侵入してくる物質に対しては皮膚の免疫細胞は過敏に反応し敵だと認識して抗体を作って攻撃します(アレルギー反応。ところが消化管の免疫は消化管に入ってくるものをすべて排除していては栄養も取れませんが、やはりウイルスや細菌などの有害なものは排除するよう攻撃しなければなりません。

 そこが消化管の免疫システムのうまくできているところで、人体に有益な食物などの物質には攻撃しないようにブレーキをかけます。これが「免疫寛容」といって、有用な物質を排除しないよう働く仕組みなのです。このブレーキが弱いと食物アレルギーが発症すると考えられます。予防的に食物除去をしているとこの「免疫寛容」を誘導できない可能性があります。

 

 「卵アレルギーがあるからアトピー性皮膚炎になるのではなく、アトピー性皮膚炎があるから卵アレルギーになる。」と考えるのが妥当だと考えられます。


 少なくとも赤ちゃんの皮膚の状態は早く良い状態、スベスベにしておくのがおすすめですね。

 

 次回はやはり赤ちゃんの時から皮膚をきれいにして、早期から加熱鶏卵を少量ずつ与えたほうがよいということを見事に立証した成育医療センターの「プチスタディー」をご紹介します。